土曜の昼にビール

食にまつわるエピソードをつづります♪ ブログ内で紹介する料理は、何かしら手作りのものを入れるのがこだわりです。

おふくろの味

おふくろの味って言葉がある。

 
小さい頃から慣れ親しんだ味。
いまの自分の味覚を形作ったもの。
 
 
 
 
私のおふくろの味は、
カレーライス、肉団子を使った酢豚、しょっぱい茄子の炒め物……。
 
 
すべて、祖母が作ったものだ。
 
 
私の家は共働きで、母方の祖父母と同居していた。
 
祖母はせっかちで完璧主義なので、家にいて手を止めているということがない。
 
だから、午後4時くらいには夕飯の買い物を済ませ、支度を済ませ、
 
母が帰ってくる頃にはさぁ食べるだけという状態になっていた。
 
 
もちろん母は祖母を手伝うし、週末は、仕事が休みの母がメインで食事を作ってくれる。
 
 
でも、それゆえに母の手料理は少しレアなのである。
週末だけの特別な料理のような感覚だ。
私にとって、いわゆるおふくろの味ではないのだ。
そういうわけで、私の幼少期の胃袋を満たしてくれたのは祖母の料理だった。
 
 
 
 
祖母の料理で家族みんなが思い出すのはカレーライスではないだろうか。
 
数種類のルーをブレンドし、玉ねぎ、にんじん、じゃがいも、豚もも肉を、たっぷりのサラダ油で炒める。
 
昭和の、黄味を帯びた、両側に取っ手がついた薄手の鍋。底は焦げたのをたわしでを繰り返し洗い、茶色い傷跡を残している。
 
祖母は炒めている間、ときどき菜箸を脇に置き、両手で取っ手を掴んで鍋を振るのだが、
その動作は年々しんどくなっているそう。
 
だから私が帰省してそばにいる時はその役を買って出る。
 
 
高校生の頃は熱に怯えておそるおそる掴んでいた取っ手も、いまはためらいなく握れるようになった。
ただし、布巾がないと無理だけど。
 
 
この年季の入った大鍋で、油がからんでてかてか光った具材をじっくり煮る。
 
 
じゃがいもが溶けて重くなったルーは、やや甘口でまろやかな味。
 
 
2日目以降は、水分が飛んで水を足したし食べる(笑)
 
 
 
 
私の、おふくろの味。
 
 
 
でも、小さい頃は味の濃い、真っ黒な祖母のおかずじゃなくて、ハンバーグとかスパゲッティが食べたかった。
 
田舎でファミレスなんてなかったから、たまに母が作ってくれるハンバーグがご馳走だった。
 
 
 
 
茶色い煮物ばかりの祖母の食事が懐かしくなったのは、
高校を卒業してからだろうか。
 
 
味覚が変わって、いまとても食べたいと思うのに、そうそう帰省はできない。
 
 
今の時代、簡単に手に入るハンバーグ弁当は、どこか物足りない。
 
 
 
 
あのおふくろの味を、あとどれくらい食べられるだろうか。
 
仕事で今年は帰省できないと悟りながら、考える。
 
 
※写真は、私のおふくろの味にしたい鯖の味噌煮。鋭意練習中!

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